精子凍結とは

精子凍結とは、新しい精子を採取して保存液で処理した後に、冷却した液体窒素の中で凍結する技術で、すでに60年ほどの歴史があります。一度凍結した精子は、液体窒素の中に入れてある限りは、半永久的に保存することができます。婦人科や泌尿器科、不妊専門のクリニックなどで精子凍結の相談ができます。

凍結保存の目的

基本的に不妊治療の一環で精子を備蓄するという比率のほうが圧倒的に高いです。

不妊治療のため

卵子のベストなタイミング(排卵の時期)に合わせて、精子の確保ができない場合などに、あらかじめ精子を保存しておきます。また精液中の精子の数が少なく、一回の射精では受精に十分な精子数が得られない場合や、精子の状態が射精ごとに大きく変動するようなケースでも利用されます。

配偶者間人工授精(IUI)や体外受精(IVF)、顕微授精などで利用されることがあります。

精子形成障害に備えるため(病気などの治療による)

未婚男性も含めて、男性にがんや白血病などの悪性腫瘍が見つかり、放射線を含む化学療法をしなくてはならない場合に、妊孕性温存を目的に精子を凍結保存することもあります。

これらの治療(抗がん剤の投与など)はがん細胞を殺すために行います。ただし、同時に精巣における精子形成を強く傷害し、精子をつくる機能の低下や、精子減少症・無精子症などになる場合があります。

そのため、治療前に精子を保存するという手段が取られます。

どんな方が利用するのか?

保存を希望する本人が成人、もしくは未成年者でも親権者の同意があれば、本人の同意によって凍結保存することができます。化学療法などによる治療前の凍結保存目的以外は受け付けていないなど、医療機関によって利用可能な条件は異なります。各病院などに問い合わせて確認しておきましょう。

精子凍結保存の手順・流れ

不妊治療の一環で保存する場合と、凍結保存そのものが目的の場合では、保存までの手順が異なることもあります。

予約する

凍結保存する施設に事前予約する必要があります。予約の仕方については、各医療機関のホームページで確認しておきましょう。

同意書を提出する

病院で精子凍結についての同意書に必要事項を記入して提出します。

採精する

精子を採取します。採精の方法は病院によって異なります。採精室などで院内採精する場合もあれば、自宅での採精が可能なところもあります。予約時に方法についても確認しておきましょう。

精子の測定

提出された精液の精子濃度や運動率等を計測します。精子の状態が悪い場合、凍結保存できないこともあります。

凍結保存

採取された精子の状態に問題がなければ、凍結保護剤を使用して液体窒素内(タンクなど)に保存します。

保存技術は施設(病院)によって異なる

精子の凍結保存は、施設によって技術の高低に大きな差があります。患者はそこを見極めるための情報収集をする必要があります。公表されている妊娠率のデータや、凍結保存の技術や使用する機器などを各施設ごとに比較しながら検討すると良いでしょう。

凍結精子を無断で処分されるトラブルもあるため、保存先の病院選びは慎重に行うようにしましょう。

凍結精子を他の施設に移動可能なところも

希望がある場合は他の施設への移動が可能というところもあります。その場合、 希望先の施設に事前に許可を取る必要があり、移動は患者自身で行います。

精子の保存期間について

技術的には、凍結した精子は半永久的に保存しておくことが可能です。本人から廃棄の意思が表明される、または本人が死亡した場合は廃棄されることになっています。

ただし、精子をどのくらいの期間保存するかといったことは、施設によって異なり、明確な基準がありません。保存期間を原則10年間とするところや、未婚者の場合は保存期間が延長可能なところもあります。保存期間の条件については、前もって調べておくようにしましょう。

凍結保存のデメリット

凍結保存された精子は、凍結する前の精子と比べると保存期間の長さに比例して生存率が低下します。凍結保存された精子を用いることによる出生児への影響については、現時点の研究報告では否定的です。しかし治療法の歴史が浅いため、今後何らかの影響が判明する可能性を否定はできません。

凍結→融解により、精子の運動率は低下(元の運動率の50~80%程まで)しますが、蘇生した活発な精子を再度回収選別して治療に用いる場合、結果にはそれほど影響しないとされています。

精子は他の細胞と比べて、凍結によるダメージが受けにくいため、何十年前から保存されている精子を使った妊娠・出産例も確認されています。

凍結にかかる費用

1回の精子凍結にかかる費用は病院によって異なります。基本的には、凍結にかかる「凍結手技料」と数ヶ月~1年間の「凍結保存料」を合わせた費用になります。精子凍結保存単独で、2~5万円程度かかる施設が多いです。契約時の保存期間を超えた場合、1年ごとに契約を更新する必要があることがほとんどです。